JAZZCAT-RECORD メールマガジン 2024年10月号



 


*粟村 政昭氏の著書「ジャズ・レコード・ブック」を読む。 連載
生前、ジャズ評論家の油井正一氏が、粟村政昭氏の「ジャズ・レコード・ブック」を世界最高の"ジャズ・レコードのガイド・ブック"として絶賛していた。ジャズ全般に渡るレコード・ガイド・ブックは例がない。1968年2月25日 第1刷発行、数年を経て2版〜3版と増補版が発売された。近年、多くのジャズ・ファンから再版の要請があり、一部の評論家やファンが尽力したが、再販は出来なかった状況があった。粟村氏が筆を起こしたのが1965年、58年の時を経て多くのファンの渇を癒すべく、ネットに依る復刻を思い至った。多くのジャズ・ファンや新たなジャズ・ファンの方々に、熟読玩味して頂けたらと思う。この著書は、雑誌「スイング・ジャーナル」1965年2月〜1967年8月まで連載された"ベスト・プレイャーズ / ベスト・レコード"に端を発し新たな人選の下、全面大改訂をほどこした書籍である。

今回「ジャズ・レコード・ブック」の前身の企画である、雑誌「スイング・ジャーナル」に、1965年2月〜1967年8月まで連載された、"ベスト・プレイャーズ / ベスト・レコード"に掲載された153名のアルバム紹介をまず読んで頂き、「ジャズ・レコード・ブック」に取り掛かることにしたいと思う。


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「 ベスト・プレイャーズ / ベスト・レコード 」

                        粟 村 政 昭

"ベスト・プレイャーズ / ベスト・レコード"は、雑誌「スイング・ジャーナル」1965年2月〜1967年8月まで連載された。最初の一年は編集部の人選であったが、1966年3月から粟村氏の人選に依る153名のレコード・ガイドである。

「某々のレコードは何を買うべきか」といった類の文章には年中お目にかかる様な気がするが、実際にレコードを購入するに当たって頼りになる内容のものは意外と少ない。その理由の第一は、撰択が甘くて最高点クラスのレコードと称するものがやたらと沢山並べられている場合が多いからだ。近頃の我国レコード市場は可成り乱戦気味だから、上手く立ち廻れば外国盤国内盤共に相当安い値段で購入することは出来る。しかし、千円、2千円の支出は我々の生活水準からみて、余程の金持ちでもない限り痛い事には変わりがない。そんな時に、これも良、あれも結構という大様な推薦のされ方をすると、全く腹が立つ。それに執筆者の中には妙にイキがって、ゲテ物レコードや道楽的な吹き込みを挙げる人もいるが、実際に身銭を切ってレコードを買うコレクターにとってこういう人々は明らかに敵である。そんな訳で、この稿を書くに当たってぼくは、推薦レコードは真に良いもの乃至は話題になったもののみにとどめ、出来るだけ少ない数のレコードを選出しておくことに決めた。勿論この他にも傑作佳作といわれるLPは沢山あるから、ファンの方はこの稿を一つの参考として、後は自分の好みに応じてコレクションの幅を拡げていかれるといいと思う。



第五回 「ベスト・プレヤーズ / ベスト・レコード」


<ギル・エバンス>
独特のカラーを持った偉大なる編曲者ギル・エバンスは今やジャズ・シーン不動の地位を打ち樹てたかに思われる。固定したバンド持たず、楽器奏者としても抜群でないアレンジャーが、これ程高い評価を受けたという事実はジャズ史上にも他に例を見ないのではなかろうか。クロード・ソーンヒル楽団の専任アレンジャーが、これ程高い評価を受けたという事実は、ジャズ史上にも他に例を見ないのではなかろうか。勿論こうしたギルの名声は一朝一夕にして得られたものでは更にない。
 クロード・ソーンヒル楽団んぽ専任アレンジャーとしての時代から、マイルスの歴史的な「クールの誕生」のセッションに参加し、彼の辿った道はコマーシャリズムに遂に毒されることのなかった信念ある芸術家として苦難の道で会った。彼の代表作としては、マイルスと組んだ「マイルス・アへッド」も勿論良いが、彼が一時期実際に率いたバンドに依る「OUT OF THE COOL」と異色作「INTO THE HOT」を組にした「ギル・エバンスの全貌」(Imp)僕はあげたいと思う。「スペインスケッチ」におけるマイルスの良さというのは僕には未だによく判らない。むしろプレスティジの「モダンアレンジの究明」や「AMERICAN'S NO.1 ARRANGER」(P.J.28)が素晴らしい。


<エラ・フィッツジェラルド>
エラの唄では僕はデッカ時代のものを好む。ヴァーブの初期のLPは彼女自身の実力とコンディションから言ってデッカ時代を上回るものがあると僕も思うのだが、いかんせん、企画と、伴奏がよろしくない。「よろしくない」などという表現を使っては誤解招く恐れがあるが、明けても暮れても大編成の伴奏で「作曲家シリーズ」ばかり聞かされていたのでは、いい加減くたびれも来ようというものだ。中には「AT THE OPERA HOUSE](VERVE 8264)の様な名唱もあるし、ルイ・アームストロングと組んだ異色作などもあるが、ルイとコンビのものではデッカ時代の録音の方が遥かに趣味の良い贅沢な楽しさに満ちていた。作曲家の種がつきてそろそろ変わった企画のものが出始めた頃には、かんじんのエラ自身の声が下降線にさしかかっていた、と言うのでは腹が立って笑い話にもならないではないか。ところでそのデッカ盤の中でまず推薦に価すると思われるのは、何といっても名唱の誉れ高い「IN A MELLOW MOOD」であろう。
 エリス・ラーキンスの絶妙の伴奏に乗って歌うエラの唄は正に完璧のインタープリテイションと言っていい。次に良いのがチップ・ウェップの専属シンガー時分の作品を集めた「STAIRWAY TO STARS」で、何より若さに任せて伸び伸びと歌っているの所が好ましい。これは国内盤が出ているが疑似ステレオなのでどうも推薦する気なれない。前にも述べたことがあるがモノーラルの録音にはそれなりの良さがある筈だ。いかにステレオ万能の時代だからといって、はるか昔の録音を無理矢理にステレオ化して不自然な効果に再生する必要が一体どこにあるのか。特にヴォーカル物の場合など何のためのステレオ化なりやと申したい。
 モノラール時代の録音はあくまでも元の形で発売されん事を強く要望する次第だ。ところで、デッカ盤のエラで他に注目作品としては、「LULLABIES OF BIRDLAND」(Dec8149),「SWEET &HOT」(Dec8155)「SINGS GERSCHWIN」(Dec 8378)等が挙げられるが、この内「LULLABIES」は、例のスキャット・ヴォーカルに専念しっっあった時代の吹き込みを集めたもので、歴史的には非常に重要だが一寸万人向きとは申せまい。「SWEET」は、これもデッカ後期の名唱として評判が高いが伴奏がいささかやかまし過ぎるきらいがある。ヴァーブのものでは、前記「OPERA HOUS」の他「ELLA &LOUIS」の"These Foolish Things"が名唱中の名唱で、これはえらの代表作として推薦を躊躇しない傑作である。「エラ・イン・ベルリン」はどうもキメの荒さが気になるし、一般の評判程には作品の質は高くない様に思われる。



<スタン・ケントン>
先般米キャピトルが大量の廃盤断行した結果、ある意味ではジャズ史上最も異色的なフルバンドであったスタン・ケントン楽団往年の名演を入手する事は極めて困難になった。廃盤政策の直後に「GERATEST HITS」と題されたオムニバス物が出たが選曲が甚だイージィで推薦作するのは差控える。わが国では最近東芝のカタログに再発物の登場を見ることが多い様だから、その裡にケントン往時の名作も再度、ひの目を見せてもらえかも判らない。ケントン楽団初期の名演は「ARTISTRY IN RHYTHM」「MILESTONES」あたりに網羅されていた。新進アレンジャー、ピート・ルゴロの斬新な編曲を中心とした之等の作品は、いささか鬼面人を驚かすの感じではあったが、確かに当時の話題を一手に集めるだけの問題作であった。但し新しい音の響きになれてしまった今日の我々の耳には、そのメカニックなサウンズがいささかの空虚感を伴って聞こえるのは致し方あるまい。これ等の作品の内では、ジューン・クリスティのフレッシュなヴォーカルの聴ける数曲と「INTERMISSION RIFF]あたりが好きである。47年キューバン・リズムに傾倒したあと、健康上の問題でスタンの音楽活動は一時停頓を来したが、50年の初めにストリングスを加えた40人編成の大バンドを組織したケントンは「INNOVATIONS IN MODERN MUSIC」の旗印にのぼった。この楽旅の前後に吹き込まれた作品は、ショーティ・ロジャースのジャズ的なものからボブ・グレティンガーの無調音楽的な作品に至るまで幅広い分野に渡っての野心作によって特徴ずけられていたが、良くも悪しもケントンが最も情熱を持って音楽に取り組んでいた時代と言えるだろう。
 当時の録音の中ではバンドのソロイストを全面的にフィーチュアーした「PRESENTS」と言うLPが一番面白かったが、一方51年の暮れに吹き込まれた「CITIY OF GLASS」は最も非ジャズ的な作品として、また現代音楽との対比と言う観点からもジャズ・マンとしてのケントンが蒙った悪評の最大の因をなした。52年にカンドリ、ロソリーノ、コーニッツといったスター・ソロイストを擁して編成されたケントン・バンドの演奏は、ジャズ的な見地からみて、ケントンが率いたバンドの内最高のものであった事は疑いない。マリガン、ホルマン、リチャーズ等の優れた編曲による傑作の数々は「NEW CONCEPTS」、「SKETCHES ON STANDARDS」に聴くことが出来る。 このバンドに依る54年のヨーロッパ楽旅はセンセーションを巻き起こしたが、55年にパーキンス、マリアーノ、ニーハウスを加えて改編されたバンドも「CONTEMPORARY CONCEPTS」に聴かれる如く堂々たる演奏を残した。これ以後のケントン・バンドの演奏には残念ながら特筆されるべきものは殆んどない、往年のヒット作を再演した「IN HI FI」(Cap SW-724)はDB誌の「JAZZ BASICS」に採り上げられた一枚だが、こういうものを代表作に選んだ選者の見識を疑う。デッカにある古いものには資料的な価値以外は余り認められない。ケントン・バンドの歩みをドキメンタリー風に綴じた4枚組の「KENTON ERA」など何とか東芝がだしてくれないものだろうか。


<スタッフ・スミス >
スタッフ・スミスとはそも何者ぞやーと質問なさる若いファンの方もあろうが、オーネット・コールマンのまるで鋸の目立てを思わせる様な耳障りなヴァイオリンに無理に感激してみせる時間があったら、一度はこのスミスのスイングの権化の如き驚異のヴァイオリン・ソロに耳を傾けて頂きたい。コールマンのヴァイオリンというのは、メロディ楽器としてよりも、むしろサウンド・エフェクト的役割の方に重点が置かれているから、大して感激しない方がまず正常な感覚であろう。スミス傑作はスイング時代に録音されたものの他、ヴァーブに入れたピータースンやガレスピーとの共演盤の出来が目覚しかったが、これは今では廃盤になって居り、現在入手できるものとしては「Swingin' Stuff」(EmArcy SRE-66008)というコペンハーゲンでの録音が一枚あるだけである。但しこのレコードに対する評価は高く彼の最高傑作との呼び声が高い。


< タル・ファーロ >
タル・ファーロはジャズ史上最も偉大なるギター奏者の一人である。ぼくはクリスチャン、フレディ・グリーンに次いで彼を高く評価している。彼の秀でたLPはヴァーブに沢山あったが先般ことごとく廃盤にされる憂目を見た。全くこれは鬼畜の作業と言わねばならぬ。その中では比較的初期の吹込みであった「Autumn in NY」と「Fascinatin’Rhythm」が良いできだった。レッド・ノーヴォ・トリオ時代のものでは、ミンガスの入った「Move」(savoy12088)とレッド・ミッチェルに代った「With Strings」(Fantasy)が鑑賞に価する。





 次回につづく (参考文献 東亜音楽社)

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最近の新品レコードの価格は?

 
USAで流通しているレコードの新品価格を一部のせてみました。

  日本国内の3000円台の時代は終わってUSでも40ドル(6,000円)
 の時代です。輸入盤が8,000円台もしかたがないのでしょう。

The New Miles Davis Quintet Miles $38.98
 Ben Webster Quintet Soulville $38.98
 John Coltrane With The Red Garnalnd Trio $40.00
 Miles Davis Sketches of spain $38.98
 Kenny Dorham Jazz Contrasts $38.98
 Gerry Mulligan Meet Ben Webster $38.98
 Ella Firzgerlad and louis $38.98
 
 








 Sonny Stiee Blows The Blues $38.98
 Hank Moblery Mobley's Messge $40.00
 George Wallington Quintet $40.00
 Jackie McLean Jackie's Pal $40.00
 Kenny Dorham Matador $40.00
 Sarah Vaughan $38.98
 Cyarles Lloyd ForestFlower $41.99
 Oscar Peterson we get Requests $40.00

 Duke Ellington & Ray Brown $40.00    
                                                
                                     

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60年代以降活躍しているボーカリストを紹介します。


 たくさんのボーカリストがでています。この時代公式サイト、facebookなどで
 自身発信をしている人が多く時代はかわりました。

 Monics Mancini モニカ・マンシーニ

  コンコード・レコードでデビュー、ダブル・グラミー賞にノミネートされたヴォーカリスト。モニカ・マンシーニは、有名な映画作曲家ヘンリー・マンシーニの娘で、コンサート・パフォーマーとして素晴らしいキャリアを築き、シカゴ交響楽団、ニューヨーク・ポップス、ボストン・ポップス、ダラス交響楽団、シアトル交響楽団、ロンドン・メトロポリタン・オーケストラなど、世界中の主要な交響楽団と共演している。
 ヘンリー・マンシーニ・コーラスのメンバーとして早くから歌い始め、ロサンゼルスのスタジオで成功を収め、プラシド・ドミンゴ、クインシー・ジョーンズ、マイケル・ジャクソンなど著名なアーティストの数多くの映画音楽やレコーディングに参加。
 モニカ・マンシーニというシンプルなタイトルのデビュー・アルバムは、彼女のPBSテレビ・スペシャル番組『モニカ・マンシーニ』に付随したものである: オン・レコード』。ニューヨーク・タイムズ紙は、マンシーニの豊かで表現力豊かな声を 「ダイヤモンドの輝きに匹敵するグラマラスなヴォーカル 」と評しスケールの大きい正統派の歌手といえる。


   発売CDの一部