日本のレーベルについて
ジャズの隆盛期である40年代〜60年代には、多くの名門レーベルが誕生した。ブルーノート、プレスティッジ、リバーサイドは三大ジャズレーベルと呼ばれ、コンテンポラリーやヴァーブ(その前身のクレフも含む)も特徴的なレーベルであった。そのほか群少マイナーレーベルに付いても言える事だが、オリジナルの定義がなかなか難しい。先日、ブルーノート1524番の「ケニー・ドーハム・アット・カフェ・ボヘミア」レーベルの住所はレキシントン、片面溝、RVGの刻印、耳ありだったので初版のオリジナルと思いきや著名なコレクターのS氏へお伺いしたところ、ジャケット表に背部分および天地、約7〜8ミリの額ぶちジャケットが初版のオリジナルであると言う。奥が深いと改めて感じた。当時(50年代)は、プレス枚数もそんな多くはなく手作り感覚に近い、その都度入念に仕上げ、工夫したアルバム作りが感じられる。それは、アルバム制作者の音楽を大切にする気持ちが現れているかのようである。
日本のレコードにおいても50〜60年代には、同じような傾向が感じられる。今回は当時、日本のジャズに多大な貢献をしたタクト、ビクターワールドグループ、テイチクの三レーベルについて紹介したいと思う。
今、手元にあるタクト盤「ナウ・ザ・タイム」(JAZZ-3)、ビクターワールドグループ盤「宮沢昭・いわな」(SMJX-10068)、テイチク盤「松本英彦のモダン・ジャズ」(NL-3005)、テイチクユニオン盤「宮沢昭・フォーユニッツ」(VPS-2008-J)いづれも内容、ジャケット写真、デザイン、素晴らしい出来映えである。この四枚のオリジナル盤について細かく紹介したい。
タクト盤宮沢昭は、ホープ目のエンボス(型押し)がかかった、原紙にビニールコーティングがなされモノクロの宮沢昭の雄姿が表と裏にレイアウトされ4名のメンバーの写真入り解説トジ込まれている。さらに驚くがレコードの収め方5ミリの厚いボールがLPと同じ大きさでくりぬかれ、そこに収めるようになっている。レーベルは黒字に銀でTAKT
STEREOが中央上部にレイアウトされ、下部はタイトルと曲,AKIRA MIYAZAWA(tenor
sax)が記入されている。よくここまで作ったと感激する仕上げりである。
ビクター(ワールドグループ)盤「いわな」は、ダブルジャケット、中にはレコーディング風景の写真が上部にレイアウトされ、油井正一氏ががライナーを書いている。録音は、後にスリーブラインドマイスで大活躍する神成芳彦の名
がクレジットされている。このオリジナル盤、表紙の写真、無類の釣り好きの宮沢昭、渓流好みの釣師で渓秀という名前まである。やや正面からのものと水面に上昇する様子躍動感をもった写真が、全体に淡いブルーの色彩の中シンプルにレイアウトされ、レーベルは鮮やかな黄緑、上部に白抜くのVICTORあとは黒字でタイトル、価格、ミュージシャン全員が日本語で記載されている。
続くテイチク盤二枚、「松本英彦のモダンジャズ」60年代前後の録音と思われる。シングルの薄いジャケット。タキシード姿でテナーを吹く松本英彦の上半身のカラー写真は絵との写真の中間的なものでレトロな雰囲気がある。レーベルは黒で銀の文字、深ミゾでずっしりした盤の質感。サイドメンに世良譲、沢田駿吾、木村新弥、猪俣猛。内容も良い。
テイチクユニオン盤「宮沢昭・フォーユニッツ」ジャケットはメンバー四人の演奏者写真が紫の地、中央にレイアウトし、裏は同じレイアウトで濃紺に写真をはずし緑とブルーでスッキリとさせている。小川正雄、油井正一氏の解説。レーベルはアズキ色で深ミゾ、中央上部がUNION,その下に、STEREOPHONICとタイトル、下部がメンバー全員と曲が銀色の日本語で書かれている。このように手元のオリジナル盤によって50年代〜60年代日本のジャズレーベルとして輝かしい活動をしていた三社のレーベルについて微細に見てきたが、感じられるのは制作者の意図やミュージシャン達への愛着、常にジャズを感じさせるジャケットや装丁に反映されている。すべてが細分化されてしまっている現在では、考えられない作りにである。我々は何か大きなものを失ってしまったと言う気持ちになる。デジタル時代に入っても、レコード文化の灯を消してはならないと思い至り、アナログの共存の時代が来る様に、もう一度何のために制作するのか、ジャズを感じさせるジャケットに、自分はこだわりたいと強く思った。
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